2019年10月12日

老後2,000万円問題

「老後2,000万円問題」とは、令和元年5月22日に金融審議会市場ワーキング・グループが発表した「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)を発端とするものです。
問題となった一部を抜粋すると、

1.現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化)
(2)収入・支出の状況
ア.平均的収入・支出
 しかし、収入も年金給付に移行するなどで減少しているため、高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると毎月の赤字額は約5万円となっている。この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補填することとなる。
(3)金融資産の保有状況
 (2)で述べた収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約 1,300 万円、30 年で約 2,000 万円の取崩しが必要になる。
2.基本的な視点及び考え方
(3)公的年金だけでは望む生活水準に届かないリスク
 人口の高齢化という波とともに、少子化という波は中長期的に避けて通れない。前述のとおり、近年単身世帯の増加は著しいものがあり、未婚率も上昇している。公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いないが、少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していく以上、年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい。今後は、公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある。年金受給額を含めて自分自身の状況を「見える化」して老後の収入が足りないと思われるのであれば、各々の状況に応じて、就労継続の模索、自らの支出の再点検・削減、そして保有する資産を活用した資産形成・運用といった「自助」 の充実を行っていく必要があるといえる。

 このような内容から「100年安心年金と言っていたのに」「2,000万円なんて貯められない」と年金問題として国会の争点になったものです。そもそも100年安心とは、公的年金の所得代替率が現役世代の5割程度となることを目標として100年後も年金制度を維持するためにはどうするかを論じたもので、年金だけで100年安心して生活できると言ったものではありません。
 年金生活という言葉があるように老後の生活に直結するため、年金については国民の関心が高い反面、問題が指摘されると、すぐに年金不信となり、年金なんかもらえるかどうかわからないと年金未納にもつながっています。
 年金制度には、老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金もありますので、社会保障として重要であることは今後も変わりません。まずは、自身の状況の把握のために年金定期便や年金ネットから自身の年金加入歴や年金見込額をきちんと知ることが必要です。また老齢年金だけでなく、万が一の障害や遺族になった時に公的年金だとどのくらい支給されるのかも確認し、その上で老後や万が一の時に資金がどれだけ不足するか、その不足分をどのように準備していくかを2,000万円という金額だけに注目するのでなく、それぞれで検討していく必要があると思います。
posted by あさ at 17:36| 年金

2019年09月05日

令和元年10月から最低賃金が改定されます。東京、神奈川で全国初の時間額1,000円超え!

令和元年8月9日に、すべての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されたことが報道発表されました。
令和元年度の答申のおもなポイントは、
・東京、神奈川で全国初の時間額1,000円超え(東京都1,013円、神奈川県1,011円)
・改定額の全国加重平均額は901円(昨年度874円)
・全国加重平均額27円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額

7月31日に発表された中央最低賃金審議会の答申では、改定額の目安は以下のようになっていますが、東北、九州などを中心に全国で目安額を超える引上げ額が19県あります。

A(28円) 埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪
B(27円) 茨城、栃木、富山、山梨、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島
C(26円) 北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、徳島、香川、福岡
D(26円) 青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄

東海3県では、
愛知県(Aランク)926円(←898円)
三重県(Bランク)873円(←846円)
岐阜県(Cランク)851円(←825円)

愛知県ではアルバイトの時給が900円からとなっている会社も多いのではないでしょうか。10月1日発効となりますので、最低賃金未満の場合は、賃金計算の途中で引き上げることは事務処理の点からも難しいでしょうから10月1日を含む賃金計算期間の初めから改定する必要が生じると思います。

以下の業務改善助成金も最低賃金引き上げ後は、最低賃金額以上に引き上げた上で事業場の最も低い賃金を30円以上引き上げた場合となります。
◆業務改善助成金
中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るための制度です。 生産性向上のための設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成します。
・30円コース 
引き上げる労働者数:1〜3人 
助成上限額:50万円
助成対象事業場:事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内、および事業場規模30人以下の事業場
助成率:4分の3

posted by あさ at 17:23| 賃金

2019年08月03日

外国人であっても労災保険給付は受けられます

労災保険は正社員であれアルバイトであれ労働者が1人でもいれば事業主が加入しなければいけない保険です。もちろん外国人労働者も例外ではありません。技能実習生でも留学生のアルバイトでも、たとえ不法就労でも、労働者に支払った賃金を集計して、事業主は労働保険料を申告納付しなければいけません。
会社が労災保険加入の手続きを怠った場合でも、原則として業務中にケガや病気になった時には労働者は給付を受けることができます。   
労災保険の申請者は、労働者本人ですが、会社で証明する欄もあり、会社が書類を整える場合が多いかと思います。日本語に習熟していない外国人に説明するのは大変ですが、外国人労働者向け労災保険給付パンフレットが厚生労働省のHPからダウンロードできます。日本語の他に、英語・ポルトガル語・韓国語・中国語・ベトナム語・タイ語・インドネシア語・ペルシャ語・スペイン語・タガログ語・カンボジア語・ネパール語・ミャンマー語が用意されています。外国人労働者向けですので、大変わかりやすく書いてあり、日本語は、労災保険事務担当の初任者研修にも役立ちそうです。

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/gaikoku-pamphlet.html

また労働災害防止のための「未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアル」もあり、製造業向けでは英語・中国語・ポルトガル語・スペイン語でも展開されています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118557.html

自社で外国人向けに翻訳することは困難ですが、最近の厚生労働省HPでは、さまざまな資料が公開されています。役立ちそうなものを探して活用されてはいかがでしょう。
posted by あさ at 18:02| 労災保険

2019年07月03日

パワーハラスメント対策が法制化されました

令和元年6月5日に「労働施策総合推進法」の改正が公布され、パワーハラスメント対策の法制化がなされました。施行時期はまだ決定していませんが、大企業は2020年4月1日、中小企業は2022年4月1日に施行される見込です。

ポイントは、
・職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。(適切な措置を講じていない場合には是正指導の対象となります)
・パワーハラスメントに関する紛争が生じた場合、調停など個別紛争解決援助の申出を行うことができるようになります。

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものです。
@優越的な関係を背景とした
A業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
B就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)
*適切な範囲の業務指示や指導についてはパワハラには当たりません

職場のパワーハラスメントの定義や事業主が講ずべき措置の具体的内容等については、今後指針において示される予定です。

パワハラは、優越的な立場にある者(経営者、上司、先輩など)は業務上必要な指導と思っていて、受けている者(部下、後輩など)にとっては、相当な範囲を超えた言動と感じ、精神的な苦痛を感じているという構図があります。中小企業では、経営者自身が社員のためにと厳しく指導して、しかし社員にとっては、指導ではなくパワハラと受け取っているかもしれません。まず、経営者からパワハラとは何か、指導が適切な範囲を超えていることはないか、社員の成長を促す指導になっているか、じっくり考えることが必要です。
posted by あさ at 10:57| メンタルヘルス

2019年06月07日

年5日の有休取得義務は、会社にとってマイナス?

大企業も中小企業も全ての規模の事業所で2019年4月から「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられています。今までは、労働者が自ら申し出なければ、有休を取得できませんでした。言い換えると労働者からの申し出がなければ、有休を与えなくても良かったのです。それが、使用者が労働者の希望を聴き、希望を踏まえて取得時季を指定し、年5日は取得させなければいけないと改正されました。たとえ労働者からの申し出がなくても使用者から働き掛けて有休を取らせなければいけないのです。
ほとんどの社員が有休を消化しているような会社は問題ありませんが、多くの企業でとまどいの声を聞きます。
そもそも有休を何日付与しなければいけないのか管理自体を全くしていない中小企業も多いと思います。「人出不足で有休なんか取られたら業務が停滞する」という声も多く聞きます。しかし、日本生産性本部が毎年発表している「労働生産性の国際比較 2018」によると、日本の労働生産性は、OECD加盟36カ国中20位、主要先進7カ国でみると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いています。長時間働くことが、生産性の向上につながっておらず、当然、社員の満足にもつながっていないのが現状です。
今回の改正を否定的にとらえるのではなく、いい機会とし、業務を効率化し、有休を積極的に取れるようにして、社員のやりがいの向上につなげるよう前向きにとらえる必要があるのではないでしょうか。

有休の確実な取得方法として以前からある年次有給休暇の計画的付与制度は、お盆や年末年始の会社休日の前後に全社的に有休を計画的に付与し、大型連休にしたり、個人ごとに誕生日などアニバーサリー休暇制度を設けたりする方法です。その場合は、労使協定の締結が必要となります。また、今回の改正で有休の取得時季を会社が指定する場合は、就業規則に記載する必要があります。

使用者として気になるのは、罰則の規定だと思います。
・年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合、30万円以下の罰金
・使用者による時季指定を行う場合において、就業規則に記載していない場合、30万円以下の罰金
・労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金

対象となる労働者1人につき1罪として取り扱われますが、労働基準監督署の監督指導においては、原則としてその是正に向けて丁寧に指導し、改善を図っていただくこととしています(「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」厚生労働省 より)、とされていますので、まずは、自社の労働者ごとの付与日数、休みの状況を確認することから始め、自社に合った方法を模索していきましょう。
posted by あさ at 22:37| 有給休暇