2024年06月02日

パートへの雇用保険加入拡大

令和6年5月10日に雇用保険法の改正が成立しました。その中で、実務に一番影響があるのが、雇用保険の適用拡大だと思います。

○雇用保険被保険者の要件
週所定労働時間 20時間以上 → 10時間以上
令和10年10月1日

例えば、パートタイマーで1日5時間週4日勤務していた場合、雇用保険加入対象だったのが、1日5時間週2日勤務で雇用保険加入対象になりますので、多くのパートタイマーが対象になると思われます。
自己都合で退職した場合、現在は、離職の日以前2年間に、賃金の支払の基礎となった日数が11日以上ある月が12ヶ月以上ないと基本手当(失業手当)の対象になりません(*)が、改正後は、賃金の支払の基礎となった日数が6日以上ある月が12ヶ月以上あると、基本手当(失業手当)の対象となります。

*11日(改正後は、6日)以上の月が12ヶ月ない場合は、賃金の支払の基礎となった労働時間数が80時間(改正後は、40時間)以上ある場合を1月とカウント。

ほとんど全てのパートタイマーが加入対象となる会社が多いと思いますので、今後発表される具体的な改正点について確認していきましょう。

○育児休業給付の保険料率の引き上げ
0.4%→0.5% 
令和7年4月1日

現在の一般の事業の雇用保険料率は、労働者0.6%(うち育児休業給付の保険料率0.2%)、事業主0.95%(うち育児休業給付の保険料率0.2%) が、労働者0.65%(うち育児休業給付の保険料率0.25%)、事業主1.0%(うち育児休業給付の保険料率0.25%)となる見込みです。
来年度の雇用保険料率の変更に注意が必要です。

今回の改正の趣旨は、『多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築、「人への投資」の強化等のため、雇用保険の対象拡大、教育訓練やリ・スキリング支援の充実、育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保等の措置を講ずる。』 ことです。
令和6年10月からは、短時間労働者の健康保険・厚生年金の適用拡大も51人以上の企業となります。
今後ますます、多様な働き方対応した採用、労務管理が求められます。
posted by あさ at 21:04| 雇用保険

2024年05月03日

令和6年4月から民間企業の障害者法定雇用率が2.5%に引き上げられています。

令和6年4月から民間企業の障害者の法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられています。障害者雇用義務の対象企業の範囲も従業員43.5人以上から40.0人以上の企業まで拡大されています。
例えば従業員40人であれば、1人は障害者を雇用しなければいけないということになります。
障害者雇用義務の対象企業は、毎年6月1日時点での障害者雇用状況をハローワークへ報告する義務があります。また、常用労働者が100人を超える企業は、法定雇用率未達成の場合、障害者雇用納付金を納める必要があります。障害者を雇用するには、作業施設や設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理等などの経済的負担が伴います。障害者雇用納付金制度は、障害者を雇用することは事業主が共同して果たしていくべき責任であるとの社会連帯責任の理念に立って、事業主間の経済的負担の調整を図るとともに、障害者を雇用する事業主に対して助成、援助を行うことにより、障害者の雇用の促進と職業の安定を図るため「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき設けられた制度です。
納付金だけでなく、法定雇用率を超えて障害者を雇用している企業には、報奨金等が支給されています。
新しい法定雇用率(2.5%)で算定する令和6年度の障害者雇用納付金は令和7年度の申告になります。
厚生労働省の「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」のパンフレットには、『障害に関係なく、希望や能力に応じて、誰もが職業を通じた社会参加のできる「共生社会」実現の理念の下、全ての事業主に、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります。』と載っています。
令和8年7月には法定雇用率が2.7%になり、対象企業も従業員37.5人以上に拡大されます。

障害者と言っても身体障害だけでなく、知的障害や精神障害もあります。障害があっても、適切なサポートをし、それぞれの特性を生かして能力を引き出し、発揮できる会社であれば、全ての人が働きやすい職場になるのではないでしょうか。令和8年7月には従業員37.5人以上が対象企業になりますので、今後対象となる人数の企業は、今から障害者雇用について考えてみませんか?
posted by あさ at 21:41| 障害者雇用

2024年04月07日

令和6年3月分から健康保険料率、介護保険料率が変更になっています

3月から協会けんぽの健康保険料率・介護保険料率が変更になっています。通常翌月に支払う給与から控除しますので、4月に支払う給与から変更することを忘れないようにしましょう。

健康保険料率
愛知県 10.02%(←10.01%)   
岐阜県 9.91%(←9.80%)
三重県 9.94%(←9.81%)
介護保険料率
全国一律 1.60%(←1.82%)

協会けんぽの保険料率は、都道府県ごとの医療費水準に基づき都道府県ごとに決定しています。
全国平均は10.00%ですが、保険料率が高い県と低い県では、最大1.07%の差があります。
愛知県は、全国平均より高く、岐阜県、三重県は全国平均より低くなっています。
協会けんぽでは、@健診の受診−健康状態を確認するために健診を毎年受けましょう!A健康後の行動−健診結果をもとに生活習慣を改善したり早期に医療機関を受診しましょう!B日々の健康づくり−適度な運動やバランスの良い食生活等で日々の健康に気をつけましょう!と健康づくりサイクルを推奨しています。
社員の健康に留意して、健康づくりについて積極的に啓蒙を行うことも、健全な事業の発展のために必要なことだと思います。
posted by あさ at 22:54| 社会保険

2024年03月20日

2024年4月からの時間外労働上限規制適用 猶予終了!

働き方改革の一環として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定され、2019年4月(中小企業は2020年4月)から適用されています。
一方で、以下の事業・業務については、長時間労働の背景に、業務の特性や取引慣行の課題があることから、時間外労働の上限について適用が5年間猶予され、また、一部特例つきで適用されています。
【適用猶予事業・業務】
・工作物の建設の事業
・自動車運転の業務
・医業に従事する医師
・鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業

いよいよ2024年4月からその猶予が終了し、時間外労働の上限規制が適用となります。

労働時間原則:1日8時間、1週間40時間以内
時間外労働限度時間:月45時間、年360時間以内
時間外労働上限:年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、月45時間を超えることができるのは年6ヶ月まで

<建設>
上限規制が全て適用(災害時の復旧・復興の事業を除く)
<自動車運転>
上限年960時間。単月100時間未満、複数月平均80時間以内、月45時間を超えることができるのは年6ヶ月まで、は適用されない
<医師>
時間外・休日労働合計の上限年1860時間。単月100時間未満、複数月平均80時間以内、月45時間を超えることができるのは年6ヶ月まで、は適用されない 
*健康確保措置に関する定めも別途あり
<鹿児島・沖縄砂糖製造>
上限規制が全て適用

厚生労働省では「適用猶予業種の時間外労働の上限規制 特設サイト」を設けて周知を図っています。  https://hatarakikatasusume.mhlw.go.jp/index.html

36協定については、2024年4月1日以後の期間のみを定めた36協定に対して上限規制が適用されます。 
(*改正労働基準法に関するQ&A 平成31年4月 2-20)

2024年4月1日から1年間の36協定を3月中に届け出る場合は、上限規制に対応した36協定の内容にする必要があります。
posted by あさ at 18:11| 労働時間

2024年02月19日

政府がまとめた少子化対策「こども未来戦略」

政府が令和5年12月22日に公表した、少子化対策をまとめた「こども未来戦略」の最初のページには〜「日本のラストチャンス」2030年に向けて〜と載っています。
 ”年間出生者数の推移を見ると、2000 年代に入るまでは 120 万人程度で推移していたが、その後急速に減少しており、減少した世代が 30 代を迎える 2030 年代に入ると若年人口は急減することが見込まれる”ため、”2030年代に入るまでが、こうした状況をを反転させることができるかどうか重要な分岐点”と述べています。
今回打ち出した対策が、有効に働くかどうかはわかりませんが、雇用関係の法改正等もこうした日本の状況の影響を大きく受けています。

育児休業の取得促進
・産後8週間以内に両親が共に14日以上の育児休業を取得した場合は、その期間の育児休業給付率を28日間を限度として現行の67%(手取り8割相当)から、80%(手取り10割相当)に引き上げ。2025年度施行予定。
育児期の柔軟な働き方の促進
・現在は子どもが3歳以降小学校就学前までの場合の措置がありませんが、育児・介護休業法で、柔軟な働き方を実現するため、@フレックスタイム制を含む出社・退社時刻の調整、Aテレワーク、B短時間勤務制度、C保育施設の設置運営等、D休暇から、事業主が職場の労働者のニーズを把握しつつ複数の制度を選択して措置し、その中から労働者が選択できる制度(「親と子のための選べる働き方制度(仮称)」)を創設。
・「育児時短就業給付(仮称)」を創設し、子どもが2歳未満の期間に時短勤務を選択した場合、賃金の10%を支給。2025年度に施行予定。現在の高年齢雇用継続給付に近い内容になると思われます。
・所定外労働の制限(残業免除)は、現在は子どもが3歳になるまでですが、子どもが小学校就学前までに引上げ。
・子の看護休暇は、現在は子どもが小学校就学前までですが、子どもが小学校3年生修了時までに引上げ。休暇取得事由は、現在は負傷し、又は疾病にかかった子の世話又は疾病の予防を図るために必要な世話をするためですが、子どもの行事(入園式等)参加や、感染症に伴う学級閉鎖等にも活用できるように範囲を見直す。
多様な働き方と子育ての両立支援
・雇用保険の加入対象は、現在は週所定労働時間が20時間以上の労働者ですが、10時間以上20時間未満の労働者も失業給付や育児休業給付等を受給できるよう対象を拡大。2028年度施行予定。

その他、「年収の壁・支援強化パッケージ」として令和5年10月から実施している@キャリアアップ助成金のコースの新設A社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外などの制度の見直しに取り組むと載っています。

「こども未来戦略」の最後には、
1.こどもを生み、育てることを経済的理由であきらめない
2.身近な場所でサポートを受けながらこどもを育てられる
3.どのような状況でもこどもが健やかに育つという安心感を持てる
4.こどもを育てながら人生の幅を狭めず、夢を追いかけられる
と記されています。具体的な法改正内容について、今後も注目していきたいと思います。
posted by あさ at 09:37| 仕事と子育ての両立