2019年12月05日

パワハラに該当する例、該当しない例とは?

厚生労働省から、令和元年10月21日に行われた「第20回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」で「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案」が示され、公表されました。すでに平成24年3月15日に公表されている以下の職場のパワーハラスメントの6類型ごとに、典型的に職場のパワーハラスメントに該当し、又は該当しないと考えられる例が示されています。

<暴行・傷害(身体的な攻撃)>
(該当すると考えられる例)
・殴打、足蹴りを行うこと。
・怪我をしかねない物を投げつけること。
(該当しないと考えられる例)
・誤ってぶつかる、物をぶつけてしまう等により怪我をさせること。
<脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)>
(該当すると考えられる例)
・人格を否定するような発言をすること。(例えば、相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な発言をすることを含む。)
・業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。
・他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。
・相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信すること。
(該当しないと考えられる例)
・遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動・行動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注意をすること。
・その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、強く注意をすること。
<隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)>
(該当すると考えられる例)
・自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。
・一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。
(該当しないと考えられる例)
・新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に個室で研修等の教育を実施すること。
・処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させる前に、個室で必要な研修を受けさせること。
<業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)>
(該当すると考えられる例)
・長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること。
・新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。
・労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。
(該当しないと考えられる例)
・労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること。
・業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること。
<業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)>
(該当すると考えられる例)
・管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。
・気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。
(該当しないと考えられる例)
・経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務に就かせること。
・労働者の能力に応じて、業務内容や業務量を軽減すること。
<私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)>
(該当すると考えられる例)
・労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。
・労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。
(該当しないと考えられる例)
・労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。
・労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと。

ただし、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ること、例は限定列挙ではないことに留意が必要と記されています。

またこの素案のはじめには、職場におけるパワーハラスメントとは、『職場において行われる@優越的な関係を背景とした言動であって、A業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、B労働者の就業環境が害されるものであり、@からBまでの要素を全て満たすもの。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。』
と示されています。この素案を受けて日本労働弁護団からは、「パワハラ助長の指針案の抜本的修正を求める緊急声明」が出されています。抜粋すると、
『あたかも労働者の行動の問題性が高ければ、指導・叱責がパワハラに該当しなくなるかのような誤解を与える指針の表現は、誤りであり、削除すべきである。むしろ、労働者に問題行動があったとしても、業務上必要かつ相当な範囲を超えた指導等はパワハラに該当することを指針に明記すべきである。』

上司は指導のつもりでも部下はパワハラと感じる。受け取り方は個人により様々です。指導する側も旧態依然とした厳しい指導でなく、コミュニケーションを取りながら個々に合わせた指導を行い、何が業務上必要かつ相当な範囲を超えた指導にあたるか、社内で十分話し合い、何よりもパワハラを絶対許さないという経営者のメッセージが必要です。

厚生労働省のハラスメント対策の総合サイト「明るい職場応援団」には、動画で学ぶハラスメント講座として基本6類型の動画がアップされています。大変面白い(と言っては語弊があるかもしれませんが)ので、参考にするといいと思います。
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/
posted by あさ at 20:41| ハラスメント

2019年11月08日

デートか残業か

令和元年版労働経済白書では、人手不足下での「働き方」について、「働きやすさ」と「働きがい」の観点から分析が行われています。
白書の骨子には、以下のように記されています。
●安心して快適に働ける「働きやすい」職場環境は、「働きがい」の前提であり基盤。
⇒ 働き方改革による「働きやすさ」の向上は、離職率や定着率を改善させる可能性あり。
●「働きがい」の向上により、定着率や離職率に加え、働く方のストレス・疲労感、労働生 産性、顧客満足度等が改善する可能性あり。
●正社員については、若い社員、下位役職者の「働きがい」が低い傾向。
⇒「働きがい」向上には、コミュニケーションの円滑化、労働時間の短縮や働き方の柔軟化、裁量権の拡大、将来のキャリア展望の明確化などが有効な可能性あり。

日本生産性本部から毎年3月に「新入社員の特徴とタイプ」が発表されていましたが、平成29年度の「キャラクター捕獲ゲーム型」をもって終了しました。
新入社員「働くことの意識」調査は、毎年6〜7月に発表されています。平成31年度は、
●「働く目的」では、過去最高だった一昨年(42.6%)から2年連続で減少してはいるものの 「楽しい生活をしたい」が最も多かった(昨年度41.1%→今年度39.6%)。
また、「経済的に豊かな生活を送りたい」も高い水準を維持(30.4%→28.2%)している。
一方、昨年過去最低を更新した「自分の能力をためす」はわずかに増え(10.0%→10.5%)、一時期増えていた「社会に役立つ」は横ばい(9.2%→9.3%)が続いている。
●「デートか残業か」では、「残業」が減り(68.5%→63.7%)、「デート」が増え(30.9%→36.0%)と、「デート派」が3人に1人を超えた。
●「人並み以上に働きたいか」では、「人並みで十分」が昨年度に続き過去最高を更新(61.6%→63.5%)し、過去最低となった「人並み以上に働きたい」(31.3%→29.0%)の倍以上の回答割合だった。その差も過去最高を更新した(30.3ポイント→34.5ポイント)

どの企業も人手不足で、募集してもなかなか応募がない。せっかく入社してもすぐに辞めてしまうという声を多く聞きます。経営者や管理職が、今まで自分たちが経験してきた働き方への誇りと自信から、それが本来あるべき姿という思いが抜けず、若い社員との間でギャップが大きくなっていることも原因の一つだと思います。このような調査報告にも目を向け、現状を把握、理解し、自社でどのようにしていけばいいか具体的に検討し、対応することが必要です。
posted by あさ at 11:53| 働き方改革

2019年10月12日

老後2,000万円問題

「老後2,000万円問題」とは、令和元年5月22日に金融審議会市場ワーキング・グループが発表した「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)を発端とするものです。
問題となった一部を抜粋すると、

1.現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化)
(2)収入・支出の状況
ア.平均的収入・支出
 しかし、収入も年金給付に移行するなどで減少しているため、高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると毎月の赤字額は約5万円となっている。この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補填することとなる。
(3)金融資産の保有状況
 (2)で述べた収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約 1,300 万円、30 年で約 2,000 万円の取崩しが必要になる。
2.基本的な視点及び考え方
(3)公的年金だけでは望む生活水準に届かないリスク
 人口の高齢化という波とともに、少子化という波は中長期的に避けて通れない。前述のとおり、近年単身世帯の増加は著しいものがあり、未婚率も上昇している。公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いないが、少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していく以上、年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい。今後は、公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある。年金受給額を含めて自分自身の状況を「見える化」して老後の収入が足りないと思われるのであれば、各々の状況に応じて、就労継続の模索、自らの支出の再点検・削減、そして保有する資産を活用した資産形成・運用といった「自助」 の充実を行っていく必要があるといえる。

 このような内容から「100年安心年金と言っていたのに」「2,000万円なんて貯められない」と年金問題として国会の争点になったものです。そもそも100年安心とは、公的年金の所得代替率が現役世代の5割程度となることを目標として100年後も年金制度を維持するためにはどうするかを論じたもので、年金だけで100年安心して生活できると言ったものではありません。
 年金生活という言葉があるように老後の生活に直結するため、年金については国民の関心が高い反面、問題が指摘されると、すぐに年金不信となり、年金なんかもらえるかどうかわからないと年金未納にもつながっています。
 年金制度には、老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金もありますので、社会保障として重要であることは今後も変わりません。まずは、自身の状況の把握のために年金定期便や年金ネットから自身の年金加入歴や年金見込額をきちんと知ることが必要です。また老齢年金だけでなく、万が一の障害や遺族になった時に公的年金だとどのくらい支給されるのかも確認し、その上で老後や万が一の時に資金がどれだけ不足するか、その不足分をどのように準備していくかを2,000万円という金額だけに注目するのでなく、それぞれで検討していく必要があると思います。
posted by あさ at 17:36| 年金

2019年09月05日

令和元年10月から最低賃金が改定されます。東京、神奈川で全国初の時間額1,000円超え!

令和元年8月9日に、すべての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されたことが報道発表されました。
令和元年度の答申のおもなポイントは、
・東京、神奈川で全国初の時間額1,000円超え(東京都1,013円、神奈川県1,011円)
・改定額の全国加重平均額は901円(昨年度874円)
・全国加重平均額27円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額

7月31日に発表された中央最低賃金審議会の答申では、改定額の目安は以下のようになっていますが、東北、九州などを中心に全国で目安額を超える引上げ額が19県あります。

A(28円) 埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪
B(27円) 茨城、栃木、富山、山梨、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島
C(26円) 北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、徳島、香川、福岡
D(26円) 青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄

東海3県では、
愛知県(Aランク)926円(←898円)
三重県(Bランク)873円(←846円)
岐阜県(Cランク)851円(←825円)

愛知県ではアルバイトの時給が900円からとなっている会社も多いのではないでしょうか。10月1日発効となりますので、最低賃金未満の場合は、賃金計算の途中で引き上げることは事務処理の点からも難しいでしょうから10月1日を含む賃金計算期間の初めから改定する必要が生じると思います。

以下の業務改善助成金も最低賃金引き上げ後は、最低賃金額以上に引き上げた上で事業場の最も低い賃金を30円以上引き上げた場合となります。
◆業務改善助成金
中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るための制度です。 生産性向上のための設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成します。
・30円コース 
引き上げる労働者数:1〜3人 
助成上限額:50万円
助成対象事業場:事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内、および事業場規模30人以下の事業場
助成率:4分の3

posted by あさ at 17:23| 賃金

2019年08月03日

外国人であっても労災保険給付は受けられます

労災保険は正社員であれアルバイトであれ労働者が1人でもいれば事業主が加入しなければいけない保険です。もちろん外国人労働者も例外ではありません。技能実習生でも留学生のアルバイトでも、たとえ不法就労でも、労働者に支払った賃金を集計して、事業主は労働保険料を申告納付しなければいけません。
会社が労災保険加入の手続きを怠った場合でも、原則として業務中にケガや病気になった時には労働者は給付を受けることができます。   
労災保険の申請者は、労働者本人ですが、会社で証明する欄もあり、会社が書類を整える場合が多いかと思います。日本語に習熟していない外国人に説明するのは大変ですが、外国人労働者向け労災保険給付パンフレットが厚生労働省のHPからダウンロードできます。日本語の他に、英語・ポルトガル語・韓国語・中国語・ベトナム語・タイ語・インドネシア語・ペルシャ語・スペイン語・タガログ語・カンボジア語・ネパール語・ミャンマー語が用意されています。外国人労働者向けですので、大変わかりやすく書いてあり、日本語は、労災保険事務担当の初任者研修にも役立ちそうです。

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/gaikoku-pamphlet.html

また労働災害防止のための「未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアル」もあり、製造業向けでは英語・中国語・ポルトガル語・スペイン語でも展開されています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118557.html

自社で外国人向けに翻訳することは困難ですが、最近の厚生労働省HPでは、さまざまな資料が公開されています。役立ちそうなものを探して活用されてはいかがでしょう。
posted by あさ at 18:02| 労災保険