2019年06月07日

年5日の有休取得義務は、会社にとってマイナス?

大企業も中小企業も全ての規模の事業所で2019年4月から「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられています。今までは、労働者が自ら申し出なければ、有休を取得できませんでした。言い換えると労働者からの申し出がなければ、有休を与えなくても良かったのです。それが、使用者が労働者の希望を聴き、希望を踏まえて取得時季を指定し、年5日は取得させなければいけないと改正されました。たとえ労働者からの申し出がなくても使用者から働き掛けて有休を取らせなければいけないのです。
ほとんどの社員が有休を消化しているような会社は問題ありませんが、多くの企業でとまどいの声を聞きます。
そもそも有休を何日付与しなければいけないのか管理自体を全くしていない中小企業も多いと思います。「人出不足で有休なんか取られたら業務が停滞する」という声も多く聞きます。しかし、日本生産性本部が毎年発表している「労働生産性の国際比較 2018」によると、日本の労働生産性は、OECD加盟36カ国中20位、主要先進7カ国でみると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いています。長時間働くことが、生産性の向上につながっておらず、当然、社員の満足にもつながっていないのが現状です。
今回の改正を否定的にとらえるのではなく、いい機会とし、業務を効率化し、有休を積極的に取れるようにして、社員のやりがいの向上につなげるよう前向きにとらえる必要があるのではないでしょうか。

有休の確実な取得方法として以前からある年次有給休暇の計画的付与制度は、お盆や年末年始の会社休日の前後に全社的に有休を計画的に付与し、大型連休にしたり、個人ごとに誕生日などアニバーサリー休暇制度を設けたりする方法です。その場合は、労使協定の締結が必要となります。また、今回の改正で有休の取得時季を会社が指定する場合は、就業規則に記載する必要があります。

使用者として気になるのは、罰則の規定だと思います。
・年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合、30万円以下の罰金
・使用者による時季指定を行う場合において、就業規則に記載していない場合、30万円以下の罰金
・労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金

対象となる労働者1人につき1罪として取り扱われますが、労働基準監督署の監督指導においては、原則としてその是正に向けて丁寧に指導し、改善を図っていただくこととしています(「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」厚生労働省 より)、とされていますので、まずは、自社の労働者ごとの付与日数、休みの状況を確認することから始め、自社に合った方法を模索していきましょう。
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posted by あさ at 22:37| 有給休暇

2019年05月25日

令和元年−働き方改革元年−

平成から令和に改元され、新しい時代の幕開けです。新年を迎えるときと同様な新たな気持ちになっている方も多いのではないでしょうか。
今年度から施行が始まった働き方改革関連法は、戦後、労働三法(労働組合法1945年・労働関係調整法1946年・労働基準法1947年)が制定された以降、70年ぶりの大改革であるとも言われています。
特に、中小企業は多大な負担を感じると思いますが、法改正の背景を意識したことはあるでしょうか。

平成29年版厚生労働白書の概要版から法改正の背景を感じることができます。
◯少子高齢化という構造的課題に取り組むため、「ニッポン一億総活躍プラン」では、成長の果実で子育て支援や社会保障の基盤を強化し、それが経済を強くするという「成長と分配の好循環」メカニズムを提示。
◯成長という視点から社会保障を考えた場合、経済成長の主な支え手である現役世代が自身のキャリア形成や子どもへの教育投資などを十分に行えるように生活の安定を図ることや、あらゆる立場の人々の労働参加・生産性向上の促進といった観点も重要。

また、過去の厚生労働白書のサブタイトルからも現在に至る背景を感じることができます。
・平成29年
 社会保障と経済成長
・平成28年
 人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える
・平成27年
 人口減少社会を考える
 〜希望の実現と安心して暮らせる社会を目指して〜
・平成26年
 健康長寿社会の実現に向けて〜健康・予防元年〜
・平成25年
 若者の意識を探る

戦後の高度経済成長を支えた日本型雇用慣行(終身雇用・年功序列賃金・企業別組合)で、若者を安い賃金で雇用し、時間をかけ育て上げ、社員は、雇用の安定と退職金という安心から会社に忠誠を誓い、定年まで働き、ということは、もはやありません。
社員の一生の雇用安定を約束できない経済状況、若者の意識の変化、少子化による労働力不足、高齢化による社会保障費の増大などなど、現在は様々な問題・課題に直面しています。
働き方改革関連法で全ての問題が解決するわけではありませんが、法改正には、これらの背景があることも理解し、対応していく必要はあるのではないでしょうか。
posted by あさ at 18:26| ご挨拶

2019年04月02日

「長時間労働に繋がる商慣行」中小企業庁調査より

平成31年3月4日に中小企業庁から「長時間労働に繋がる商慣行に関するWEB調査結果概要」が発表されました。
中小企業庁のこれまでの調査において、長時間労働に繋がる商慣行として「繁忙期対応」と「短納期対応」が挙げられていることから、その背景にある実態の把握を目的に調査を実施したそうです。
その中で特に印象に残ったものを抜粋すると、

◯繁忙期の発生要因(取引上の課題)
課題1.問題のある受発注方法の常態化
[企業の生声]
・小売業の「売り切れ=損失=メーカーの責任」という考え方が強く、即時対応が常態化。(食料品製造業)
・親事業者の働き方改革実施により年末年始に発注が集中したため、三が日も操業した。今春の10連休の対応が心配である。(印刷産業)
・大手小売店(ホームセンター・ドラッグストア等)は、各社独自の受発注サイクルが規定されており、そのタイミングで確実な納品ができないと取引が継続できなくなる。(卸売業)
課題2.年末・年度末集中
[企業の生声]
・国は平準化を推進していると言うが、実際は自治体等の発注は年度後半に偏り繁忙期となり、地域での発注の平準化が必要。(技術サービス産業)
・年末・年度末に竣工する物件が多い。(建設業)
・官公庁から測量・調査・設計等の業務を受注しているが、6月に受注しても発注者側の工程が不明確なため、11月ぐらいまで業務に取り掛かれない。(技術サービス産業)

◯短期期受注の発生要因(取引上の課題)
課題1.納期のしわ寄せ
[企業の生声]
・取引先の大企業の時短対応のため、丸投げが増えた。建設業は、工程遅れを下請が取り戻す構造。元請けは休むが下請は責任施行といわれやることが増えた。(建設業)
・顧客満足を優先で取引先の大企業が短納期を受けるため、こちらも短納期にならざるをえない。繁忙期であっても通常期より短い納期依頼が平気である。(素形材産業)
・装置の仕様決めが遅れても納期が変わらない。(半導体・半導体製造装置産業)
・取引先の大企業が残業を減らすために、下請の納期が厳しくなっている。(機械製造業)
課題2.受発注方法(多頻度配送・在庫負担・即日納入)
[企業の生声]
・大手企業がリスクを負わないため、在庫を持たず、数量がある程度決まってから発注。発注後は早期の納品を迫られる。また予測数量が少なかった場合は自社の在庫負担となる。(食料品製造業)
・調剤薬局に一日多数回配送(4〜5回)を求められる。配送先への配送コストオンは出来ず、値引き要求が恒常的に求められる。(卸売業)
・前注文なしに必要なものを必要な時にもってこいという商慣習が蔓延しており、取引先もやられているからと、当社に強要してくる(紙・紙加工品産業)

◯繁忙期対応に伴う上昇コストの負担状況
・繁忙期の労務時間増加に伴う人件費上昇などのコスト負担については、自社で負担している企業割合が99%

◯短納期受注対応に伴う上昇コストの負担状況
・短納期受注による労務時間増加に伴う人件費上昇などのコスト負担については、自社で負担している企業の割合が99%

この調査からは、大企業の下請けも多い中小企業いおいて、大企業の働き方改革実現の影響を受けている実態を感じます。
2019年4月から施行が始まる働き方改革関連法の中小企業の現場での遵守は大変厳しいものがあると思います。
それでも労働者からも顧客からも社会からも必要とされ、選ばれる企業になるためには、経営構造も変化させながら、こういった調査結果の生の声も参考にしながら検討し進めていくしかないでしょう。
posted by あさ at 20:12| 労働時間

2019年03月08日

人手不足 どうする?

エン・ジャパン株式会社が実施した2019年の「人材不足の状況」についてのアンケート調査(762社から回答)によると、「人材が不足している部門がある」と回答した企業が9割という結果だったそうです。
経営者からは、「仕事はあるが、人がいない」という声をよく聞きます。
調査結果では「新規人材の採用」を解決策として挙げた会社が多かったそうですが、中小企業からは、「人を募集しても応募もない」という声もよく聞きます。
中小企業は、どうしても会社の知名度や給料、休日数など大企業とは差がでてしまう場合も多いのではないでしょうか。
「新規人材の採用」をするには、新卒採用を定期的に行うことや、中途採用の場合は、自社で求める人材を明確にし、ミスマッチを起こさないようにすることも必要でしょう。
最近は、「高齢者雇用」「外国人雇用」「仕事を離れてからブランクのある女性の雇用」などの積極採用にも目を向ける企業も増えているようです。
また、「今いる人材が離職しないこと」「業務の効率化」は、どうしても検討しなければならないことす。
採用・定着には、自社の魅力をいかに伝え、理解し、実感してもらうかだと思います。
しかし、その前に「自社の魅力は何か」明確になっていますか?経営理念や経営方針が明確であることはもちろんですが、それを実現するためには、労働条件も適切である必要があります。
「休みはありません。給料も安いです。でもやりがいはあります。」と言って伝わるでしょうか?

2019年4月からの働き方改革は、企業に多大な負担をかけるものという見方ではなく、労働者の雇用環境を改善することで、会社にいい人材が集まり、定着し、労働者の幸福、会社の発展につながるという見方をしませんか。
実際の運用には、色々と難しい面があると思いますが、少しでも労働者の幸福と会社の発展が相反するものでなく、同じ方向に行くよう、社会保険労務士としてできるお手伝いをしていきたいと思います。
posted by あさ at 12:17| 採用

2019年02月09日

同一労働同一賃金って?

「働き方改革関連法」の大きなポイントは、以下の3点です。
@時間外労働の上限規制 2019.4.1(中小企業2020.4.1)
A年次有給休暇の取得義務化 2019.4.1
B同一労働同一賃金 2020.4.1(中小企業2021.4.1)
日本・東京商工会議所が公表した「働き方改革関連法への準備状況等に関する調査」によれば、この内容について「知らない」と回答した企業は、「時間外労働の上限規制」が39.3%、「年次有給休暇の取得義務化」が24.3%、「同一労働同一賃金」が47.8%。「同一労働同一賃金」については、約6割の企業が知らないと回答しています。
知っていると回答した企業でもきちんと理解されているのか疑問です。「同一労働同一賃金」という言葉だけが、一人歩きしている印象を受けます。
「同一労働同一賃金」とは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差をなくすための規定を整備し(パートタイム労働者・有期雇用労働者、派遣労働者)、待遇に関する説明義務を強化し、行政による指導・助言等や行政ADRの規定を整備したものです。
不合理な待遇差をなくすためにパート有期法、派遣法に均衡・均等待遇規定の明確化がされ、 2018年12月28日に「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」いわゆる「同一労働同一賃金ガイドライン」が発表されました。
いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差は不合理なものでないのか、原則となる考え方と具体例が示されました。割とわかりやすいのは、正社員には通勤手当、食事手当が支払われるが、パートタイム労働者には支払われないという事例は、仕事との関連がない通勤や食事に対する手当なので、同一の支給を行わなければならないとされています。しかし、あくまで原則となる考え方を示したもので、◯か✕かはっきりするものではありません。
また、この法律は、正規労働者と非正規労働者との不合理な待遇差の解消が求められるもので、総合職、限定正社員などの異なる正社員間の待遇差については、対象となっていません。
施行までまだ時間がありますので、まずは、自社の手当の種類や支給要件、正規・非正規の職務内容の違いなど、きちんと整理し、不合理がないか、差があれば、明確な理由が説明できるか、ひとつずつ検証していく必要があります。
賃金等の待遇については、正規・非正規にかかわらず、労働者の納得を得ることが、企業の存続・発展の要になっていくのだと思います。
posted by あさ at 20:48| 賃金