2025年02月08日

令和7年度 年金制度改正の方向(65歳以上の在職者)

令和7年度は、5年に一度の年金制度改正の年です。新聞紙上でも、年金改正について大きく掲載されることも多くなってきました。
その中で、厚生労働省は、働く高齢者の「在職老齢年金」制度について、令和8年4月から見直す方向で検討に入っています。
現在65歳以上の働く人(*厚生年金に加入して働いている人)は、賃金と厚生年金の合計が、50万円を超えると、原則超えた部分の1/2の年金額が停止されています。賃金額によっては、年金が全額停止になることもあります。
この場合の賃金は、賞与を含めた年収の1/12と考えてもらえばいいです。年金額は、65歳以降は基礎年金が含まれているので、基礎年金を除いた厚生年金部分だけです。
この上限を50万円から62万円に引き上げる方向です。年金が停止されることは、働く高齢者の意欲を削ぎ、働き控えに繋がっているという考えからですが、実際は、どうなんでしょう?
令和6年賃金構造基本統計調査速報によると、65〜69歳の月間所定内給与額の平均は、275,500円(*第2表 年齢階級、学歴、企業規模別平均月間所定内給与額)。厚生労働省から発表された一人あたりの平均年金額は、月額170,223円(*男性・厚生年金期間中心。第19回社会保障審議会年金部会資料)。
平均額で見ると、賃金と年金額を合計して50万円を超えていません。65歳以降に年金が停止になっているのは、16%くらいだそうです。中小企業では65歳以上は嘱託社員となっている例が多いと思いますが、その社員に影響があるでしょうか?上限が62万円に引き上がることによって、停止されなくなる人は、中小企業では、それほど多くないと思われます。

今後も色々な改正案が、新聞等に載ってくると思いますが、どのように変わるか、自分自身、また会社に影響があるのか、見出しだけに踊らされることなく、内容をよく理解する必要があります。
posted by あさ at 13:24| 年金

2023年12月03日

第3号被保険者って何?

政府の「年収の壁支援強化パッケージ」では、「年収106万円の壁」と「年収130万円の壁」への対応策が打ち出されています。
・年収106万円を超えると、企業規模100人超の会社では社会保険の加入義務が生じる。
・年収130万円を超えると、企業規模にかかわらず配偶者の社会保険の被扶養者から外れ、国民健康保険、国民年金の加入義務が生じる。
配偶者の社会保険の被扶養者であれば国民年金第3号被保険者として国民年金保険料の負担がありません。この第3号被保険者の制度は、正しく理解されていないと感じることが多々あります。

第3号被保険者
第2号被保険者(※)に扶養されている配偶者の方で、原則として年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の方(年収130万円未満であっても、厚生年金保険の加入要件にあてはまる方は、厚生年金保険および健康保険に加入することになるため、第3号被保険者には該当しません)。
※厚生年金保険や共済組合等に加入している会社員や公務員の方。
ただし、65歳以上の老齢基礎年金などを受ける権利を有している方は除きます。
(日本年金機構のHPから)

○保険料は配偶者が払っている?
第3号被保険者の保険料は、その配偶者が加入している厚生年金または共済組合において、第3号被保険者の人数に応じ、公的年金制度として負担する仕組としているため、配偶者本人が直接負担するわけではありません。独身者も含めた制度全体で第3号被保険者の保険料を負担していることになります。
○配偶者が厚生年金に加入している間は第3号被保険者となる?
配偶者が厚生年金に加入していても第3号被保険者は60歳到達までです。また配偶者が65歳に到達すると自身が60歳未満でも第3号被保険者ではなくなり国民年金第1号被保険者として保険料の負担が生じます。
○配偶者に扶養されていればずっと第3号被保険者?
第3号被保険者の制度ができたのは、昭和61年4月1日です。それより前は厚生年金加入者の被扶養配偶者は国民年金の加入は任意だったため加入していない人も多く、任意加入した場合は保険料を負担していました。

令和5年9月21日に開催された社会保障審議会(年金部会)では第3号制度について『第3号被保険者のあり方そのものに着目した何らかの見直しを行うか、「壁」を感じながら働く第3号被保険者が少なくなるよう、短時間労働者への被用者保険の適用拡大を一層加速化することが基本となる。』として審議がされています。

年収の壁の問題については、次回2025年(令和7年)の年金制度改正に注目していきたいと思います。
posted by あさ at 21:26| 年金

2023年11月03日

年収の壁・支援強化パッケージ

公的年金制度は長期的な制度であるため、少なくとも5年ごとに、国民年金及び厚生年金の財政の現況及び見通しの作成、「財政検証」を実施することになっています。
前回は2019(令和元)年で、その検証を受けて、翌年の令和2年に年金制度が改正され、短時間労働者の社会保険適用の企業規模要件を段階的に引き上げることが決まりました。(令和4年10月〜100人超。令和6年10月〜50人超)
次回は2024年(令和6年)でその翌年2025年(令和7年)に改正予定です。それまでの当面の対応策として令和5年10月から「年収の壁支援強化パッケージ」が始まりました。

●106万円の壁への対応
現在、企業規模100人超の会社は短時間労働者にも健康保険・厚生年金保険加入が必要となります(学生除外)。
要件として、
@労働時間週20時間以上
A賃金月8.8万円以上
B勤務期間2ヶ月超
賃金が年106万円になると社会保険に加入することによって手取りが減ることを避ける短時間労働者が就業調整するため、106万円の壁と言われています。
そのため手取りが減らないように「社会保険適用促進手当」を支給した会社に、キャリアアップ助成金に新たに「社会保険適用時処遇改善コース」を新設し、一定期間助成金を受けることができるようにしました。
(1)手当等支給メニュー
賃金の15%以上を社会保険促進手当として追加支給 
1人あたり:1年目20万円、2年目20万円
3年目以降は賃金の18%以上を増額 
1人あたり:3年目10万円
(2)労働時間延長メニュー
週の所定労働時間を1時間以上(2時間以上、3時間以上、4時間以上)延長し、
賃金の15%以上(10%以上、5%以上、−)増額した場合 
1人あたり:30万円

厚生労働省では手当の名称は労使間の話し合いで決めることも可能としていますが、助成金の支給審査の効率化から「社会保険適用促進手当」の名称を使用するようにと回答しています。
また賃金制度の改定となりますので就業規則の変更も必要です。
この社会保険適用促進手当を支給し、社会保険適用に伴い新たに発生した本人負担分の社会保険料相当額を上限として標準報酬月額・標準賞与額の算定において考慮しないこととなっています。

●130万円の壁への対応
社会保険の被扶養者の認定要件は年収130万円未満ですので、年末など繁忙期でも130万円を超えないように就業調整する短時間労働者への対応として、一時的な収入超過である旨を事業主が証明することで引き続き被扶養者認定が可能となります。

どちらも令和7年の年金制度改正までの2年間の時限措置となります。

次回年金制度改正で、厚生年金加入者の被扶養配偶者は国民年金保険料を納付することなく納付したと同じ扱いになる国民年金3号制度が見直されるか、注目されるところです。
posted by あさ at 18:55| 年金

2019年10月12日

老後2,000万円問題

「老後2,000万円問題」とは、令和元年5月22日に金融審議会市場ワーキング・グループが発表した「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)を発端とするものです。
問題となった一部を抜粋すると、

1.現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化)
(2)収入・支出の状況
ア.平均的収入・支出
 しかし、収入も年金給付に移行するなどで減少しているため、高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると毎月の赤字額は約5万円となっている。この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補填することとなる。
(3)金融資産の保有状況
 (2)で述べた収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約 1,300 万円、30 年で約 2,000 万円の取崩しが必要になる。
2.基本的な視点及び考え方
(3)公的年金だけでは望む生活水準に届かないリスク
 人口の高齢化という波とともに、少子化という波は中長期的に避けて通れない。前述のとおり、近年単身世帯の増加は著しいものがあり、未婚率も上昇している。公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いないが、少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していく以上、年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい。今後は、公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある。年金受給額を含めて自分自身の状況を「見える化」して老後の収入が足りないと思われるのであれば、各々の状況に応じて、就労継続の模索、自らの支出の再点検・削減、そして保有する資産を活用した資産形成・運用といった「自助」 の充実を行っていく必要があるといえる。

 このような内容から「100年安心年金と言っていたのに」「2,000万円なんて貯められない」と年金問題として国会の争点になったものです。そもそも100年安心とは、公的年金の所得代替率が現役世代の5割程度となることを目標として100年後も年金制度を維持するためにはどうするかを論じたもので、年金だけで100年安心して生活できると言ったものではありません。
 年金生活という言葉があるように老後の生活に直結するため、年金については国民の関心が高い反面、問題が指摘されると、すぐに年金不信となり、年金なんかもらえるかどうかわからないと年金未納にもつながっています。
 年金制度には、老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金もありますので、社会保障として重要であることは今後も変わりません。まずは、自身の状況の把握のために年金定期便や年金ネットから自身の年金加入歴や年金見込額をきちんと知ることが必要です。また老齢年金だけでなく、万が一の障害や遺族になった時に公的年金だとどのくらい支給されるのかも確認し、その上で老後や万が一の時に資金がどれだけ不足するか、その不足分をどのように準備していくかを2,000万円という金額だけに注目するのでなく、それぞれで検討していく必要があると思います。
posted by あさ at 17:36| 年金