「老後2,000万円問題」とは、令和元年5月22日に金融審議会市場ワーキング・グループが発表した「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)を発端とするものです。
問題となった一部を抜粋すると、
1.現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化)
(2)収入・支出の状況
ア.平均的収入・支出
しかし、収入も年金給付に移行するなどで減少しているため、高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると毎月の赤字額は約5万円となっている。この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補填することとなる。
(3)金融資産の保有状況
(2)で述べた収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約 1,300 万円、30 年で約 2,000 万円の取崩しが必要になる。
2.基本的な視点及び考え方
(3)公的年金だけでは望む生活水準に届かないリスク
人口の高齢化という波とともに、少子化という波は中長期的に避けて通れない。前述のとおり、近年単身世帯の増加は著しいものがあり、未婚率も上昇している。公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いないが、少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していく以上、年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい。今後は、公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある。年金受給額を含めて自分自身の状況を「見える化」して老後の収入が足りないと思われるのであれば、各々の状況に応じて、就労継続の模索、自らの支出の再点検・削減、そして保有する資産を活用した資産形成・運用といった「自助」 の充実を行っていく必要があるといえる。
このような内容から「100年安心年金と言っていたのに」「2,000万円なんて貯められない」と年金問題として国会の争点になったものです。そもそも100年安心とは、公的年金の所得代替率が現役世代の5割程度となることを目標として100年後も年金制度を維持するためにはどうするかを論じたもので、年金だけで100年安心して生活できると言ったものではありません。
年金生活という言葉があるように老後の生活に直結するため、年金については国民の関心が高い反面、問題が指摘されると、すぐに年金不信となり、年金なんかもらえるかどうかわからないと年金未納にもつながっています。
年金制度には、老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金もありますので、社会保障として重要であることは今後も変わりません。まずは、自身の状況の把握のために年金定期便や年金ネットから自身の年金加入歴や年金見込額をきちんと知ることが必要です。また老齢年金だけでなく、万が一の障害や遺族になった時に公的年金だとどのくらい支給されるのかも確認し、その上で老後や万が一の時に資金がどれだけ不足するか、その不足分をどのように準備していくかを2,000万円という金額だけに注目するのでなく、それぞれで検討していく必要があると思います。
2019年10月12日
老後2,000万円問題
posted by あさ at 17:36| 年金