2022年12月26日

令和5年4月1日から中小企業も月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%に

令和5年4月1日から中小企業に猶予されていた月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率を「5割以上の率」とする規定が全企業に適用されます。「5割以上」ですから多くの企業が50%とすると思われます。
現状月60時間を超える時間外労働がある企業は、令和5年4月1日から発生する時間外労働については割増賃金率が50%となります。法定時間外労働は、1ヶ月45時間(1年単位の変形労働時間制の場合42時間)1年360時間(同320時間)が上限ですから、1ヶ月60時間を超える時間外労働がある会社はすでに特別条項付きの36協定の締結をしていると思います。
特別条項付きの36協定は、限度時間を超えた労働にかかる割増賃金率を25%以上と定める必要があるため多くの会社は法定の25%として記載をしていると思います。1ヶ月60時間を超えると50%になりますが、まだ厚生労働省から書式の変更についての公表はありません。1月1日からだったり、20日締めの会社で12月21日からだったり、来年4月1日を挟んだ36協定の締結があると思います。36協定は、届け出時の法令で問題ないため、現状のままでも構いませんし、わかるように記載してもいいと思います。
「賃金の決定、計算及び支払の方法」は就業規則の絶対的必要記載事項になるため、就業規則の改定も必要になります。
給与の締め日が例えば20日締めだと締め日の途中で計算を変えることは難しいでしょうから令和5年3月21日から発生した時間外労働から変更する必要があるでしょう。
1ヶ月60時間を超える時間外労働について50%の割増賃金の支払に代えて代替休暇を与えることもできますが、労使協定の締結、就業規則の改定が必要です。中小企業への導入は少しハードルが高いかなと思います。
生産性を向上させ、労働時間の縮減等に取り組む中小事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成する「働き方改革推進助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」は多くの利用があったため、申請と予算残額の状況を踏まえ、令和4年度の交付申請の受付は、令和4年10月4日に一旦受付が停止されています。
割増賃金率が2倍ですので、当然人件費が増大します。時間外労働の削減には、人員を増やす、業務を効率化するなど取り組むべきことがあります。残り3ヶ月間ですので先送りはできません。具体的に進める必要があります。
posted by あさ at 16:53| 賃金

2022年09月04日

令和4年度最低賃金−すべての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました

令和4年8月23日に、すべての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされたことが厚生労働省から発表されました。
8月2日に公表された目安では30円〜31円の引き上げでしたが、昨今の物価上昇や大都市圏との差を勘案して30円〜33円の引き上げとなり、47都道府県のうち22道県が目安より1円〜3円引き上げました。全国加重平均は昨年の930円から961円となり、31円の引き上げは昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額です。

Aランク(目安30円引き上げ) 
*目安と同じ
東京都 
1,072←1,041
神奈川県 
1,071←1,040 
大阪府 
1,023←992
愛知県 
986←955
Bランク(目安31円引き上げ) 
*目安と同じ
静岡県 
944←913
三重県 
933←902  
Cランク(目安30円引き上げ)  
*目安と同じ
岐阜県 
910←880
Dランク(目安30円引き上げ)
*目安より3円引き上げ
沖縄県・高知県 
853←820
*目安より2円引き上げ
愛媛県・佐賀県・長崎県・熊本県・宮崎県・鹿児島県
853←821
*目安より1円引き上げ
青森県・秋田県
853←822

答申された改定額は、10月1日から10月中旬までの間に順次発効される予定ですので、10月分給与には注意が必要です。


R4地域別最低賃金.jpg
posted by あさ at 19:21| 賃金

2022年08月19日

令和4年度地域別最低賃金額改定の目安が公表されました。

令和4年8月2日に、令和4年度地域別最低賃金額改定の目安について公表されました。
都道府県の経済実態に応じ、全都道府県をABCDの4ランクに分けて、引上げ額の目安を提示しています。

<一部抜粋>
○Aランク(31円引き上げ) 
東京都 1,041→1,072
神奈川県 1,040→1,071
大阪府 992→1,023
愛知県 955→986
○Bランク(31円引き上げ)
静岡県 913→944
三重県 902→933
○Cランク(30円引き上げ)
岐阜県 880→910
○Dランク(30円引き上げ)
沖縄県・高知県 820→850

令和4年度の最低賃金額が発効となるのは10月ですが、ほとんど目安額通りに決まっています。
令和4年10月からは、短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大も始まります。
現在の時給が、最低賃金以下になっていないか、パート社員が社会保険の加入対象になるのか、加入となった場合、保険料はいくらかなど、準備を進める必要があります。
posted by あさ at 11:54| 賃金

2021年09月04日

令和3年10月から地域別最低賃金が改定されます

令和3年8月13日に厚生労働省は、都道府県労働局に設置されている地方最低賃金審議会が答申した令和3年度の地域別最低賃金の改定額を取りまとめたことを発表しました。

令和3年度地方最低賃金審議会の答申のポイント
・47都道府県で、28円〜30円、32円の引上げ(引上げ額が28円は40都道府県、29円は4県、30円は2県、32円は1県)
・改定額の全国加重平均額は930円(昨年度902円)
・全国加重平均額28円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額
・最高額(1,041円)に対する最低額(820円)の比率は、78.8%(昨年度は78.2%。なお、この比率は7年連続の改善)

全ての都道府県で令和3年度地域別最低賃金が決定し、10月から最低賃金が改定されます。最高額は、東京都の1,041円、最低額は高知県、沖縄県の820円です。東海三県では、28円UPし、
・愛知県 955円(←927)
・三重県 902円(←874) 
・岐阜県 880円(←852)

パートタイマーの時給が最低賃金を下回らないように10月から変更が必要です。10月1日からですが、賃金締切日に合わせて、例えば20日締めの会社なら9月21日から改訂した方が、パートタイマーにとってもわかりやすく、望ましいと思います。
posted by あさ at 18:46| 賃金

2021年04月04日

令和3年4月1日「同一労働同一賃金」中小企業でも義務化

令和3年4月1日から中小企業でも同一企業における正規雇用労働者と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者)の間の不合理な待遇差を禁止した「パートタイム・有期雇用労働法」の改正が施行されます。いわゆる「同一労働同一賃金」が中小企業でも義務化されました。
日本の賃金制度は、仕事の内容ではなくその人の能力に賃金を支払う「職能型」と言われます。それに対し欧米は、従事する仕事によって賃金が決まる「職務型」 と言われます。職務型は、同じ仕事なら同じ賃金でわかりやすいのですが、日本の職能型では、同じ仕事なのか大変判断が難しいです。
パートタイム・有期雇用労働法では、

不合理な待遇差の禁止
@職務内容※
A職務内容・配置の変更範囲
Bその他の事情
の内容を考慮して不合理な待遇差を禁止「均衡待遇」
差別的取扱いの禁止
@職務内容※
A職務内容・配置の変更範囲
が同じ場合は、差別的取扱い禁止 「均等待遇」
※職務内容とは、業務の内容+責任の程度

と、職務型と職能型を混ぜた日本版の同一労働同一賃金になっていて、ますます難しいです。どう判断するのか厚生労働省から原則となる考え方のガイドラインが出ていますが、○×が明確にわかる訳ではありません。
パートタイム・有期雇用労働法改正では、待遇差の内容や理由についての説明義務が強化されています。○×を明確にしようとする前に、まずは、この手当は何のために、誰に払っているのか、自社のパートタイマーはどのような働き方を希望しているのかなど、きちんと整理して、パートタイマー等が不満なく働けるように自社の制度を再検討していきましょう。
posted by あさ at 18:27| 賃金