2020年02月03日

賃金請求権の時効2年から3年に

労働政策審議会労働条件分科会が令和元年12月27日に開催され、「賃金等請求権の消滅時効の在り方について」議論されました。
賃金請求権の消滅時効については、労働基準法で2年間(退職手当については5年間)と定められています。
民法では、一般債権に係る消滅時効については、@債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年間行使しないとき、またはA権利を行使することができる時(客観的起算点)から10 年間行使しないときに時効によって消滅するとされていますので、賃金請求権の消滅時効期間は、契約上の債権の消滅時効期間とのバランスも踏まえ5年とし、ただし、当分の間、3年間とすることで結論に達しました。
ただし、以下の消滅時効は現行のままです。
・退職手当 5年
・年次有給休暇請求権 2年
・労働災害補償請求権 2年
施行は令和2年4月1日となる予定です。施行から5年経過後の状況を勘案しつつ検討が行われますが、労働者代表委員から、労働基準法の労働者保護という趣旨を踏まえ、見直しにおいては、原則の5年とすべきとの意見があったようです。
<賃金等請求権の消滅時効の在り方について(報告)(案)より>

賃金請求権の時効で一番問題になるのが、未払い残業代請求です。今年の4月から中小企業でも残業の上限規制が始まります。上限を守るために会社がサービス残業を命じたり、たとえ労働者自らサービス残業を行った場合でも、未払い残業代は発生することになります。 また計算根拠も家族手当や通勤手当等以外の手当もきちんと含まれた単価になっているか確認が必要です。
賃金請求権の時効が2年から3年になると未払い残業代は1.5倍になりますので、「労務倒産」となることもあり得ます。労働時間の管理、賃金の計算はしっかりと行っていきましょう。
posted by あさ at 23:49| 賃金

2020年01月03日

令和2年 明けましておめでとうございます

新しい年号での初めての年明けです。
平成最後の年に始まった働き方改革関連法改正ですが、いよいよ今年4月から中小企業でも時間外労働の上限規制が開始します。

1.時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間
*これまでの厚生労働大臣告示と同じ時間ですが、法律に規定されました。
2.臨時的な特別な事情があって労使が特別条項で合意しても
・時間外労働の上限は、年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計は、月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計について「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」が全て1月あたり80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6回が限度 *今までと同じ
<注意>特別条項がなくても時間外労働と休日労働の上限は月100時間未満、2〜6ヶ月平均80時間以内

今年の4月1日以降に提出する36協定から上限規制が適用され、様式も変更になります。
従って、令和2年1月1日から始まる36協定の場合の上限規制は、令和3年1月1日から。令和2年4月1日から始まる36協定の場合は、そこから上限規制となります。

そのほかパート、高齢者、外国人労働者についての改正や方針が色々出ています。
○パート
・パートの厚生年金の適用拡大。現在対象となる企業規模従業員501人以上を2022年10月に101人以上、2024年10月に51人以上に引き下げ(案)
○高齢者
・60〜64歳の在職老齢年金の見直し。年金の一部が支給停止になる厚生年金と賃金の合計基準額を月28万円から月47万円に引き上げ(案)
・70歳までの就業機会確保を事業主の努力義務とする高年齢者雇用安定法の改正(方針)
・60歳時から賃金が75%未満に低下した場合、雇用保険から支給されている高年齢雇用継続給付を段階的に廃止(方針)
○外国人労働者
・今年4月1日から健康保険法の被扶養者にも原則として国内居住が要件に
・今年3月1日から雇用保険の外国人雇用状況の届出に在留カード番号の記載が必要に

労働者から見た働くということ、企業から見た働かせるということを根本から問い直し、実際に変化していかなければならない1年になると思います。
変化の実現に向けて、当事務所も力を尽くしたいと思います。
今年もよろしくお願い申し上げます。 
posted by あさ at 17:45| ご挨拶

2019年12月05日

パワハラに該当する例、該当しない例とは?

厚生労働省から、令和元年10月21日に行われた「第20回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」で「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案」が示され、公表されました。すでに平成24年3月15日に公表されている以下の職場のパワーハラスメントの6類型ごとに、典型的に職場のパワーハラスメントに該当し、又は該当しないと考えられる例が示されています。

<暴行・傷害(身体的な攻撃)>
(該当すると考えられる例)
・殴打、足蹴りを行うこと。
・怪我をしかねない物を投げつけること。
(該当しないと考えられる例)
・誤ってぶつかる、物をぶつけてしまう等により怪我をさせること。
<脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)>
(該当すると考えられる例)
・人格を否定するような発言をすること。(例えば、相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な発言をすることを含む。)
・業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。
・他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。
・相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信すること。
(該当しないと考えられる例)
・遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動・行動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注意をすること。
・その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、強く注意をすること。
<隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)>
(該当すると考えられる例)
・自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。
・一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。
(該当しないと考えられる例)
・新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に個室で研修等の教育を実施すること。
・処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させる前に、個室で必要な研修を受けさせること。
<業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)>
(該当すると考えられる例)
・長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること。
・新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。
・労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。
(該当しないと考えられる例)
・労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること。
・業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること。
<業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)>
(該当すると考えられる例)
・管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。
・気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。
(該当しないと考えられる例)
・経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務に就かせること。
・労働者の能力に応じて、業務内容や業務量を軽減すること。
<私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)>
(該当すると考えられる例)
・労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。
・労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。
(該当しないと考えられる例)
・労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。
・労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと。

ただし、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ること、例は限定列挙ではないことに留意が必要と記されています。

またこの素案のはじめには、職場におけるパワーハラスメントとは、『職場において行われる@優越的な関係を背景とした言動であって、A業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、B労働者の就業環境が害されるものであり、@からBまでの要素を全て満たすもの。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。』
と示されています。この素案を受けて日本労働弁護団からは、「パワハラ助長の指針案の抜本的修正を求める緊急声明」が出されています。抜粋すると、
『あたかも労働者の行動の問題性が高ければ、指導・叱責がパワハラに該当しなくなるかのような誤解を与える指針の表現は、誤りであり、削除すべきである。むしろ、労働者に問題行動があったとしても、業務上必要かつ相当な範囲を超えた指導等はパワハラに該当することを指針に明記すべきである。』

上司は指導のつもりでも部下はパワハラと感じる。受け取り方は個人により様々です。指導する側も旧態依然とした厳しい指導でなく、コミュニケーションを取りながら個々に合わせた指導を行い、何が業務上必要かつ相当な範囲を超えた指導にあたるか、社内で十分話し合い、何よりもパワハラを絶対許さないという経営者のメッセージが必要です。

厚生労働省のハラスメント対策の総合サイト「明るい職場応援団」には、動画で学ぶハラスメント講座として基本6類型の動画がアップされています。大変面白い(と言っては語弊があるかもしれませんが)ので、参考にするといいと思います。
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/
posted by あさ at 20:41| ハラスメント

2019年11月08日

デートか残業か

令和元年版労働経済白書では、人手不足下での「働き方」について、「働きやすさ」と「働きがい」の観点から分析が行われています。
白書の骨子には、以下のように記されています。
●安心して快適に働ける「働きやすい」職場環境は、「働きがい」の前提であり基盤。
⇒ 働き方改革による「働きやすさ」の向上は、離職率や定着率を改善させる可能性あり。
●「働きがい」の向上により、定着率や離職率に加え、働く方のストレス・疲労感、労働生 産性、顧客満足度等が改善する可能性あり。
●正社員については、若い社員、下位役職者の「働きがい」が低い傾向。
⇒「働きがい」向上には、コミュニケーションの円滑化、労働時間の短縮や働き方の柔軟化、裁量権の拡大、将来のキャリア展望の明確化などが有効な可能性あり。

日本生産性本部から毎年3月に「新入社員の特徴とタイプ」が発表されていましたが、平成29年度の「キャラクター捕獲ゲーム型」をもって終了しました。
新入社員「働くことの意識」調査は、毎年6〜7月に発表されています。平成31年度は、
●「働く目的」では、過去最高だった一昨年(42.6%)から2年連続で減少してはいるものの 「楽しい生活をしたい」が最も多かった(昨年度41.1%→今年度39.6%)。
また、「経済的に豊かな生活を送りたい」も高い水準を維持(30.4%→28.2%)している。
一方、昨年過去最低を更新した「自分の能力をためす」はわずかに増え(10.0%→10.5%)、一時期増えていた「社会に役立つ」は横ばい(9.2%→9.3%)が続いている。
●「デートか残業か」では、「残業」が減り(68.5%→63.7%)、「デート」が増え(30.9%→36.0%)と、「デート派」が3人に1人を超えた。
●「人並み以上に働きたいか」では、「人並みで十分」が昨年度に続き過去最高を更新(61.6%→63.5%)し、過去最低となった「人並み以上に働きたい」(31.3%→29.0%)の倍以上の回答割合だった。その差も過去最高を更新した(30.3ポイント→34.5ポイント)

どの企業も人手不足で、募集してもなかなか応募がない。せっかく入社してもすぐに辞めてしまうという声を多く聞きます。経営者や管理職が、今まで自分たちが経験してきた働き方への誇りと自信から、それが本来あるべき姿という思いが抜けず、若い社員との間でギャップが大きくなっていることも原因の一つだと思います。このような調査報告にも目を向け、現状を把握、理解し、自社でどのようにしていけばいいか具体的に検討し、対応することが必要です。
posted by あさ at 11:53| 働き方改革

2019年10月12日

老後2,000万円問題

「老後2,000万円問題」とは、令和元年5月22日に金融審議会市場ワーキング・グループが発表した「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)を発端とするものです。
問題となった一部を抜粋すると、

1.現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化)
(2)収入・支出の状況
ア.平均的収入・支出
 しかし、収入も年金給付に移行するなどで減少しているため、高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると毎月の赤字額は約5万円となっている。この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補填することとなる。
(3)金融資産の保有状況
 (2)で述べた収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約 1,300 万円、30 年で約 2,000 万円の取崩しが必要になる。
2.基本的な視点及び考え方
(3)公的年金だけでは望む生活水準に届かないリスク
 人口の高齢化という波とともに、少子化という波は中長期的に避けて通れない。前述のとおり、近年単身世帯の増加は著しいものがあり、未婚率も上昇している。公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いないが、少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していく以上、年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい。今後は、公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある。年金受給額を含めて自分自身の状況を「見える化」して老後の収入が足りないと思われるのであれば、各々の状況に応じて、就労継続の模索、自らの支出の再点検・削減、そして保有する資産を活用した資産形成・運用といった「自助」 の充実を行っていく必要があるといえる。

 このような内容から「100年安心年金と言っていたのに」「2,000万円なんて貯められない」と年金問題として国会の争点になったものです。そもそも100年安心とは、公的年金の所得代替率が現役世代の5割程度となることを目標として100年後も年金制度を維持するためにはどうするかを論じたもので、年金だけで100年安心して生活できると言ったものではありません。
 年金生活という言葉があるように老後の生活に直結するため、年金については国民の関心が高い反面、問題が指摘されると、すぐに年金不信となり、年金なんかもらえるかどうかわからないと年金未納にもつながっています。
 年金制度には、老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金もありますので、社会保障として重要であることは今後も変わりません。まずは、自身の状況の把握のために年金定期便や年金ネットから自身の年金加入歴や年金見込額をきちんと知ることが必要です。また老齢年金だけでなく、万が一の障害や遺族になった時に公的年金だとどのくらい支給されるのかも確認し、その上で老後や万が一の時に資金がどれだけ不足するか、その不足分をどのように準備していくかを2,000万円という金額だけに注目するのでなく、それぞれで検討していく必要があると思います。
posted by あさ at 17:36| 年金