2019年08月03日

外国人であっても労災保険給付は受けられます

労災保険は正社員であれアルバイトであれ労働者が1人でもいれば事業主が加入しなければいけない保険です。もちろん外国人労働者も例外ではありません。技能実習生でも留学生のアルバイトでも、たとえ不法就労でも、労働者に支払った賃金を集計して、事業主は労働保険料を申告納付しなければいけません。
会社が労災保険加入の手続きを怠った場合でも、原則として業務中にケガや病気になった時には労働者は給付を受けることができます。   
労災保険の申請者は、労働者本人ですが、会社で証明する欄もあり、会社が書類を整える場合が多いかと思います。日本語に習熟していない外国人に説明するのは大変ですが、外国人労働者向け労災保険給付パンフレットが厚生労働省のHPからダウンロードできます。日本語の他に、英語・ポルトガル語・韓国語・中国語・ベトナム語・タイ語・インドネシア語・ペルシャ語・スペイン語・タガログ語・カンボジア語・ネパール語・ミャンマー語が用意されています。外国人労働者向けですので、大変わかりやすく書いてあり、日本語は、労災保険事務担当の初任者研修にも役立ちそうです。

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/gaikoku-pamphlet.html

また労働災害防止のための「未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアル」もあり、製造業向けでは英語・中国語・ポルトガル語・スペイン語でも展開されています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118557.html

自社で外国人向けに翻訳することは困難ですが、最近の厚生労働省HPでは、さまざまな資料が公開されています。役立ちそうなものを探して活用されてはいかがでしょう。
posted by あさ at 18:02| 労災保険

2019年07月03日

パワーハラスメント対策が法制化されました

令和元年6月5日に「労働施策総合推進法」の改正が公布され、パワーハラスメント対策の法制化がなされました。施行時期はまだ決定していませんが、大企業は2020年4月1日、中小企業は2022年4月1日に施行される見込です。

ポイントは、
・職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。(適切な措置を講じていない場合には是正指導の対象となります)
・パワーハラスメントに関する紛争が生じた場合、調停など個別紛争解決援助の申出を行うことができるようになります。

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものです。
@優越的な関係を背景とした
A業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
B就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)
*適切な範囲の業務指示や指導についてはパワハラには当たりません

職場のパワーハラスメントの定義や事業主が講ずべき措置の具体的内容等については、今後指針において示される予定です。

パワハラは、優越的な立場にある者(経営者、上司、先輩など)は業務上必要な指導と思っていて、受けている者(部下、後輩など)にとっては、相当な範囲を超えた言動と感じ、精神的な苦痛を感じているという構図があります。中小企業では、経営者自身が社員のためにと厳しく指導して、しかし社員にとっては、指導ではなくパワハラと受け取っているかもしれません。まず、経営者からパワハラとは何か、指導が適切な範囲を超えていることはないか、社員の成長を促す指導になっているか、じっくり考えることが必要です。
posted by あさ at 10:57| メンタルヘルス

2019年06月07日

年5日の有休取得義務は、会社にとってマイナス?

大企業も中小企業も全ての規模の事業所で2019年4月から「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられています。今までは、労働者が自ら申し出なければ、有休を取得できませんでした。言い換えると労働者からの申し出がなければ、有休を与えなくても良かったのです。それが、使用者が労働者の希望を聴き、希望を踏まえて取得時季を指定し、年5日は取得させなければいけないと改正されました。たとえ労働者からの申し出がなくても使用者から働き掛けて有休を取らせなければいけないのです。
ほとんどの社員が有休を消化しているような会社は問題ありませんが、多くの企業でとまどいの声を聞きます。
そもそも有休を何日付与しなければいけないのか管理自体を全くしていない中小企業も多いと思います。「人出不足で有休なんか取られたら業務が停滞する」という声も多く聞きます。しかし、日本生産性本部が毎年発表している「労働生産性の国際比較 2018」によると、日本の労働生産性は、OECD加盟36カ国中20位、主要先進7カ国でみると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いています。長時間働くことが、生産性の向上につながっておらず、当然、社員の満足にもつながっていないのが現状です。
今回の改正を否定的にとらえるのではなく、いい機会とし、業務を効率化し、有休を積極的に取れるようにして、社員のやりがいの向上につなげるよう前向きにとらえる必要があるのではないでしょうか。

有休の確実な取得方法として以前からある年次有給休暇の計画的付与制度は、お盆や年末年始の会社休日の前後に全社的に有休を計画的に付与し、大型連休にしたり、個人ごとに誕生日などアニバーサリー休暇制度を設けたりする方法です。その場合は、労使協定の締結が必要となります。また、今回の改正で有休の取得時季を会社が指定する場合は、就業規則に記載する必要があります。

使用者として気になるのは、罰則の規定だと思います。
・年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合、30万円以下の罰金
・使用者による時季指定を行う場合において、就業規則に記載していない場合、30万円以下の罰金
・労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金

対象となる労働者1人につき1罪として取り扱われますが、労働基準監督署の監督指導においては、原則としてその是正に向けて丁寧に指導し、改善を図っていただくこととしています(「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」厚生労働省 より)、とされていますので、まずは、自社の労働者ごとの付与日数、休みの状況を確認することから始め、自社に合った方法を模索していきましょう。
posted by あさ at 22:37| 有給休暇

2019年05月25日

令和元年−働き方改革元年−

平成から令和に改元され、新しい時代の幕開けです。新年を迎えるときと同様な新たな気持ちになっている方も多いのではないでしょうか。
今年度から施行が始まった働き方改革関連法は、戦後、労働三法(労働組合法1945年・労働関係調整法1946年・労働基準法1947年)が制定された以降、70年ぶりの大改革であるとも言われています。
特に、中小企業は多大な負担を感じると思いますが、法改正の背景を意識したことはあるでしょうか。

平成29年版厚生労働白書の概要版から法改正の背景を感じることができます。
◯少子高齢化という構造的課題に取り組むため、「ニッポン一億総活躍プラン」では、成長の果実で子育て支援や社会保障の基盤を強化し、それが経済を強くするという「成長と分配の好循環」メカニズムを提示。
◯成長という視点から社会保障を考えた場合、経済成長の主な支え手である現役世代が自身のキャリア形成や子どもへの教育投資などを十分に行えるように生活の安定を図ることや、あらゆる立場の人々の労働参加・生産性向上の促進といった観点も重要。

また、過去の厚生労働白書のサブタイトルからも現在に至る背景を感じることができます。
・平成29年
 社会保障と経済成長
・平成28年
 人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える
・平成27年
 人口減少社会を考える
 〜希望の実現と安心して暮らせる社会を目指して〜
・平成26年
 健康長寿社会の実現に向けて〜健康・予防元年〜
・平成25年
 若者の意識を探る

戦後の高度経済成長を支えた日本型雇用慣行(終身雇用・年功序列賃金・企業別組合)で、若者を安い賃金で雇用し、時間をかけ育て上げ、社員は、雇用の安定と退職金という安心から会社に忠誠を誓い、定年まで働き、ということは、もはやありません。
社員の一生の雇用安定を約束できない経済状況、若者の意識の変化、少子化による労働力不足、高齢化による社会保障費の増大などなど、現在は様々な問題・課題に直面しています。
働き方改革関連法で全ての問題が解決するわけではありませんが、法改正には、これらの背景があることも理解し、対応していく必要はあるのではないでしょうか。
posted by あさ at 18:26| ご挨拶

2019年04月02日

「長時間労働に繋がる商慣行」中小企業庁調査より

平成31年3月4日に中小企業庁から「長時間労働に繋がる商慣行に関するWEB調査結果概要」が発表されました。
中小企業庁のこれまでの調査において、長時間労働に繋がる商慣行として「繁忙期対応」と「短納期対応」が挙げられていることから、その背景にある実態の把握を目的に調査を実施したそうです。
その中で特に印象に残ったものを抜粋すると、

◯繁忙期の発生要因(取引上の課題)
課題1.問題のある受発注方法の常態化
[企業の生声]
・小売業の「売り切れ=損失=メーカーの責任」という考え方が強く、即時対応が常態化。(食料品製造業)
・親事業者の働き方改革実施により年末年始に発注が集中したため、三が日も操業した。今春の10連休の対応が心配である。(印刷産業)
・大手小売店(ホームセンター・ドラッグストア等)は、各社独自の受発注サイクルが規定されており、そのタイミングで確実な納品ができないと取引が継続できなくなる。(卸売業)
課題2.年末・年度末集中
[企業の生声]
・国は平準化を推進していると言うが、実際は自治体等の発注は年度後半に偏り繁忙期となり、地域での発注の平準化が必要。(技術サービス産業)
・年末・年度末に竣工する物件が多い。(建設業)
・官公庁から測量・調査・設計等の業務を受注しているが、6月に受注しても発注者側の工程が不明確なため、11月ぐらいまで業務に取り掛かれない。(技術サービス産業)

◯短期期受注の発生要因(取引上の課題)
課題1.納期のしわ寄せ
[企業の生声]
・取引先の大企業の時短対応のため、丸投げが増えた。建設業は、工程遅れを下請が取り戻す構造。元請けは休むが下請は責任施行といわれやることが増えた。(建設業)
・顧客満足を優先で取引先の大企業が短納期を受けるため、こちらも短納期にならざるをえない。繁忙期であっても通常期より短い納期依頼が平気である。(素形材産業)
・装置の仕様決めが遅れても納期が変わらない。(半導体・半導体製造装置産業)
・取引先の大企業が残業を減らすために、下請の納期が厳しくなっている。(機械製造業)
課題2.受発注方法(多頻度配送・在庫負担・即日納入)
[企業の生声]
・大手企業がリスクを負わないため、在庫を持たず、数量がある程度決まってから発注。発注後は早期の納品を迫られる。また予測数量が少なかった場合は自社の在庫負担となる。(食料品製造業)
・調剤薬局に一日多数回配送(4〜5回)を求められる。配送先への配送コストオンは出来ず、値引き要求が恒常的に求められる。(卸売業)
・前注文なしに必要なものを必要な時にもってこいという商慣習が蔓延しており、取引先もやられているからと、当社に強要してくる(紙・紙加工品産業)

◯繁忙期対応に伴う上昇コストの負担状況
・繁忙期の労務時間増加に伴う人件費上昇などのコスト負担については、自社で負担している企業割合が99%

◯短納期受注対応に伴う上昇コストの負担状況
・短納期受注による労務時間増加に伴う人件費上昇などのコスト負担については、自社で負担している企業の割合が99%

この調査からは、大企業の下請けも多い中小企業いおいて、大企業の働き方改革実現の影響を受けている実態を感じます。
2019年4月から施行が始まる働き方改革関連法の中小企業の現場での遵守は大変厳しいものがあると思います。
それでも労働者からも顧客からも社会からも必要とされ、選ばれる企業になるためには、経営構造も変化させながら、こういった調査結果の生の声も参考にしながら検討し進めていくしかないでしょう。
posted by あさ at 20:12| 労働時間